マスク着用を拒否した客を降ろしたバス会社に行政処分?行政処分についてわかりやすく説明していきます。

国土交通省は、9月1日に伊豆箱根バスに対して、バスの中でマスクの着用を拒否した客を途中で下したとして行政処分をしました。バスの中で客がマスクをしなければならないという規定はなく法令違反に該当するということが理由で、25日間のバスの使用停止となりました。ここでの規定とは法律ではなく、バス会社のルールにあたります。バス会社でマスクを着けていない客へのルールを定めていれば処分はありませんでした。行政処分は厳しいなどの様々な反響がでていますが、この行政処分とはいったいどのようなものなのでしょうか?わかりやすく説明していきます。

(1)行政処分とは

行政処分とは、「法に基づき、①行政庁が、②優越的な意思の発動または公権力の行使として、③国民に対して、④具体的事実に関し、⑤法的規制をする行為」 のことを言います。これだけだとわかりにくいので詳しく説明していきます。

①行政庁が行う行為であること

行政庁とは、内閣、各省大臣、都道府県知事、市町村長などのことを言います。国会の行為(立法行為)や裁判所の行為(司法行為)は、行政機関ではないので該当しません。

②優越的な意思の発動または公権力の行使であること

優越的な意思の発動または公権力の行使であることとは、一般市民より優位な立場をもとに行う行為です。公権力の行使とあるように、一方的に命令し、確定し、行為の規準を定めることです。

③国民に対してであること

国民に対してであることは、当たり前に聞こえるかも知れませんが、例えば市長が市役所職員に対して行う通達などを除外するためです。

④具体的事実であること

議会が制定する条例などは、一般的・抽象的なため行政行為には当たりません。

⑤法的規制をする行為であること

法的規制をする行為とは、私人の権利や義務の発生・変更・消滅を生じさせる行為になります。具体的には、今回のバス会社であれば、25日間はバス使用禁止というということです。

(2)行政処分の具体例

行政処分には上表のとおり10の分類があります。

私たちの生活になじみのあるものに関してはいくつか具体的な例をあげて説明します。「下命(禁止)」の代表例は、「交通違反で、運転免許の取り消し」や「飲食店の営業許可取消し処分」があります。「許可」の代表例は、「自動車の運転免許」や「飲食店の営業許可」があります。「免除」の代表例は、「国民年金保険料の納付免除」があります。ここまでは私たちの生活にもなじみのあるものが多いです。

「特許」の代表例は、「工事をする際の、道路の占有許可」や「外国人の帰化の許可」などがあります。「認可」の代表例は、「公共料金の値上げ」などがあります。この辺は私たちの生活から少し距離が出てきます。

「確認」の代表例は、「発明の特許」があげられます。分類の中にも「特許」はありますが、この「特許」は行政が特定の人のために新たに「~をやってもいいです」と与えることです。「発明の特許」は、発明を特許庁が認めて特許権を与えることなので、行政処分上は「確認」に当たります。このように行政処分の分類と普段私たちが使っている言葉では意味が異なるものがあるので注意が必要です。

「公証」の代表例は、「不動産登記」、「受理」の代表例は、「婚姻届の受理」があげられ、私たちの生活になじみのあるものになります。

(3)まとめ

行政処分とは、「法に基づき、行政庁が、優越的な意思の発動または公権力の行使として、国民に対して、具体的事実に関し、法的規制をする行為」です。「法に基づき」とあるように、国民の代表者である国会で成立した法律に基づいて行われる行為で、法律に基づかない行為は認められていません。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい方はこちらから当事務所までご連絡ください。