定款を紛失した場合の対応方法について

(1)定款を紛失した場合の5つの対応方法

定款(ていかん)とは、会社設立時に発起人全員の同意のもとで定める企業の根本原則が記載された「会社の憲法」とも呼ばれている書類で、会社を設立するときに必要な書類です。定款は法律によって本店及び支店に備え置くことが義務付けられており、会社の営業時間内に株主や債権者から閲覧等の請求があれば、これに応じなければなりません。しかし先代が会社を設立しており定款のある場所が分からない、事務所を引越した際にどこかにいってしまったなどの理由で紛失してしまうことも少なくありません。助成金や補助金の申請、各種許認可等の申請、金融機関との取引(口座開設や融資など)、税務署への届け出など、数多くの場面で定款(定款原本のコピー及び原本証明)の提出が求められるため、定款を紛失すると困ったことになります。以下に定款を紛失してしまった場合の対処方法を説明していきます。

定款の提出を求められた際、定款を紛失したことが原因で各種手続きを進められないとなると、会社側が困るだけでなく、第三者からの信用を失うことになりかねません。そこで、定款の紛失が分かった場合には、すみやかに次の5つの方法をご検討ください。

①登記手続きを依頼した専門家に相談する
②【会社設立後5年以内の場合】設立登記を行った法務局に登記申請書の閲覧を申請
③【会社設立後20年以内の場合】公証役場に定款謄本の交付請求
④【電子定款で認証を受けた場合】「同一情報の提供」の請求手続き
⑤再作成手続きで再生する

①登記手続きを依頼した専門家に相談する

確実に入手できる方法ではありませんが、会社の設立業務・定款変更手続き等を専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)に依頼した場合には、依頼先がクライアント情報として定款の謄本等のデータを保管している場合があります。特に、現在も顧問契約を締結している専門家がいれば、定款謄本を保管している可能性は高いです。確実に保管しているとは言えませんが、最も気軽に確認できる方法となります。

②【会社設立後5年以内の場合】設立登記を行った法務局に登記申請書の閲覧を申請

原始定款(会社設立時の定款)及び変更手続き後の定款の内容は、法務局で閲覧することができます。なぜなら法務局は申請があったときから5年間は各種申請書類を保管しているからです。ただし、法務局では謄本を手に入れることはできず、閲覧(スマホ・デジカメでの撮影は可能)が許されているだけです。そのため別途定款再生の手続きが必要である点にご注意ください。

③【会社設立後20年以内の場合】公証役場に定款謄本の交付請求

株式会社・一般社団法人・一般財団法人の設立時には、公証役場にて公証人に定款を認めてもらう必要があります。この認めてもらう際に、公証役場保管用と株式会社の備え付け用の2部の原始定款が作成されます。そのため株式会社等が定款を紛失したとしても公証役場に行けば原始定款は手に入ります。公証役場の保管期間は20年のため、設立後20年を超えている場合は入手できません。また保管している定款は設立時の定款のため、変更している場合は公証役場で入手することはできません。なお合同会社・合資会社・合名会社の場合は公証人に認めてもらう必要はないため基本保管はされていません。

④【電子定款で認証を受けた場合】「同一情報の提供」の請求手続き

以前は書面による定款のみだったものが、PDF化された電子定款が認められるようになりました。電子定款で認証を受けた場合は、電子認証制度のオンラインシステムで「同一情報の提供」を請求することができます。③と同様に保管している定款は設立時の定款のため、変更している場合は入手することはできません。

⑤再作成手続きで再生する

定款の謄本が手に入った場合・法務局で閲覧により内容を把握できた場合には、その内容を書面化すれば定款を再生することができます。その一方で、すでに定款を認証してから20年以上が経過した場合などには、定款を簡単に再生することはできません。その場合には、法務局で登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を入手するなどして定款に必要な情報を集め、書面化したものを定款変更手続きにかけ、新たな定款として扱うことになります。定款を再作成するためには、定款変更手続きの遵守が求められます。

1)定款の再作成(商号・目的・本店情報・公告方法・発行可能株式総数・譲渡制限の内容などを記載)
2)株主総会の招集・開催
3)定款変更に関する決議
4)新定款を備え置き

定款紛失時の再発行手続きでは、ふたたび公証役場で認証を受ける必要はありません。紛失した当事者からすると「新たに定款を作った」というイメージかもしれませんが、法的にはあくまでも変更手続きだからです。

(2)まとめ

定款を紛失した場合、すみやかに定款を再作成手続きで再生するための対応が必要です。なぜなら、定款とは会社にとって不可欠のもので法的にも設置が義務付けられているものだからです。資金調達や各種申請手続きに弊害が出るだけではなく、第三者からの信用を失って経営自体に悪影響が生じかねません。なお建設業許可申請には定款の提出が必須となっています。これから建設業許可申請を行う方は定款の有無を確認しておきましょう。