自筆証書遺言を書くことに決めて、準備も終わった。でも書き方がよくわからない方へ、自筆証書遺言の書き方とひな形、守るべき点と注意点までわかりやすく説明していきます

自筆証書遺言を書くことに決めて、「相続人調査」、「財産調査」、「ご本人のご意向」、「遺言執行者の決定」などの準備も無事終わった方向けに、自筆証書遺言の書き方とひな形、守るべき点と注意点までわかりやすく説明していきます。

(1)自筆証書遺言を書くにあたっての注意点について

①「全文」を自書する

全文とは、遺言事項を書き記した部分のことです。財産目録を添付する場合は、自書でもなくてパソコンで入力することも可能ですが、財産目録の各ページに署名・押印する必要があります。なお、他人が書く、添え手などして補助すると無効となる場合があります。そのためできるだけ文字数を減らしてシンプルな内容の文案を作成しましょう。どうしても補助が必要な場合は、自筆が不要な公正証書遺言に変更しましょう。

②「日付」を自書する

「令和5年10月」のように正確ではない日付ですと無効となる場合があります。「令和5年10月2日」のように年月日を正確に記載するようにしましょう。日付も「自書」である必要があるため、印鑑等を使用すると無効となる可能性があるので注意が必要です。

③「氏名」を自書する

旧姓やペンネーム等でもよいという判例がありますが、後の手続きが困難になる可能性があるため、戸籍通りに記載しましょう。注意事項としては、通常は「真一」で記載している場合で、戸籍上は「眞一」など旧字を使用している場合は、戸籍上の旧字である「眞一」と記載する必要がある点になります。

④「印」を押す

印は特に決められていないため、どんな印でも構わないとされています。しかし遺言の信ぴょう性を高めるために「実印」で対応することが望ましいです。もし「実印」がない場合は、銀行などの金融機関に届け出ている印鑑を使用しましょう。

⑤書面の不備があった場合

訂正、書き加え、変更の方式は法律で厳密に決められています。訂正箇所に二重線を引いて、その上に訂正印を押すといった一般的な方法ではないため、書き間違ったら基本は破棄して新たに書き直す方が望ましいです。

⑥封について

封も本人がすべて自書し、本文で使用した印(実印)、遺言書と同じ日付を書きましょう。

(2)自筆証書遺言の文例

※1 「誰に」「何を」「相続させる」と記載しましょう。
※2 土地は「所在」「地番」を記載しましょう。通常の住所と地番が異なる可能性があります。不動産登記簿を取得して「地番」を正確に記載しましょう。
※3 建物は「所在」「家屋番号」を記載しましょう。こちらも不動産登記簿の情報を記載しましょう。
※4 相続人以外に財産を渡す場合は、「遺贈する」と記載しましょう。
※5 記載されている財産以外を相続する人を記載しましょう。
※6 葬儀の主宰者を指定します。祭祀主宰者は仏壇、位牌、墓石、墓地などを管理することにもなります。
※7 遺言執行者を指定しましょう。
※8 必要に応じて付言を添えましょう。付言に法的効果はありませんが、次の2つのことが期待できます。
  a)「遺言を残した気持ち」を記すことで遺言者の気持ちを整理できる
  b)相続人間の紛争を未然に防ぐ
※9 実印で押印しましょう。

(3)自筆証書遺言の保管について

遺言の効力が発生するのは、遺言者が死亡したときになります。つまり、その時遺言者はこの世にいないため、遺言の保管方法が重要になります。重要なものを保管する先として、貸金庫を想像される方が多いと思います。しかし貸金庫の契約者が遺言者の場合、亡くなった後に貸金庫をあけることや中身の持ち出しが困難になりますので、貸金庫に預けることはやめましょう。

(4)まとめ

自筆証書遺言は、「全文を自書」など法律で決められていることが多く、法的に無効になる可能性も多いなどリスクが存在しています。しかし作成事態に費用が掛からず、内容も秘密にできるため、手軽に作成できるというメリットがあります。相続人の人数が少なく相続人間の仲が良好や場合や、余命宣告され時間がない場合にまずは自筆証書遺言を作成して公正証書遺言を作成する場合などに向いています。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい、相談をしてみたい方はこちらから当事務所までご連絡ください。