遺言書を書くことにし、遺言書の種類も決まった。書く前に準備しておくことはあるの?遺言書を書く前の準備についてわかりやすく説明していきます

元気なうちに家族の将来を考え、最良の方法を提供し、相続手続きで困ることがないようにするために、遺言書を書くことにしました。遺言書の種類も「自筆証書遺言」「公正証書遺言」のどちらにするか決まりました。それでは次は何を行えばよいのでしょうか?いきなり遺言書を書き始めることもできますが、準備しておくとよいものもあります。遺言書を書く前の準備についてわかりやすく説明していきます。

(1)遺言書を書く前の準備について

遺言書を書くにあたって、準備しておくとよいものは、「相続人調査」、「財産調査」、「ご本人のご意向」、「遺言執行者の決定」の4点になります。どれも不備があると後々苦労することになるので、きちんと準備してから遺言書を書きはじめましょう。それでは「ご本人のご意向」を除く3点についてそれぞれ詳しく説明していきます。

①相続人調査

ご自身に子どもがいる場合は、子どもが相続人になるイメージはつきやすいですが、子どもや配偶者がいない場合など、自分の相続人が誰になるのかが気になっている方もいらっしゃると思います。誰が相続人になるかは法律で決まっており、「公正証書遺言」の場合は、公証役場に遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本を提出する必要があります。「自筆証書遺言」であれば、作成時に戸籍謄本は必要ありませんが、家庭裁判所で検認の申し立てをする際には、戸籍謄本が必要になるため、遺言書を書く前に現時点での戸籍謄本を取りよせましょう。この時点で収集した戸籍謄本は、遺言が実行される際にも使用することができますので無駄にはなりません。

収集する戸籍謄本は、遺言書を書く時点での相続人の戸籍謄本となります。相続人になれるのは、配偶者と血縁関係にある人です。自分の子どもや親、兄弟姉妹には、民法によって相続人になれる順位が定められおり、第1~第3順位まであります。詳細は下記記事で確認してください。

相続人は誰になる?相続人になれる人の優先順位をわかりやすく説明します

もし相続人の認識が誤っていると、遺言書を書いたとしても無効になる可能性が高くなりますので注意が必要です。

②財産調査について

「自分の財産だから忘れているはずがない」と思い込んでしまうことは要注意です。長らく使用していなかったたなどの理由で、見落とされた口座があとから発見されるケースは多々あります。不動産に関しては、固定資産税を払う必要がないものもあります。そのため、遺言が執行されるときに、固定資産税納税通知書が存在しないため、不動産の存在に気付かないことがあるので注意が必要になります。

財産調査の資料となりうるものは、通帳、カード、不動産登記簿、納税通知書(不動産など)、株券、金融機関から定期的に届く残高報告書、保険証券、借用書になります。集めた書類から、不動産、金融資産、保険契約、その他財産、債務(借金)を洗い出し、それらの評価額を記載した財産の一覧を作成します。

相続手続きを専門家等に依頼すると、金融機関の数で費用が変わってきます。金融機関数が多いと、手続きに工数がかかるため別途料金がかかることがあります。もしご家族が手続きをするとしても、金融機関数は少ない方が手続きが楽になります。普段使っていないまたは使用頻度の少ない口座を解約する良い機会になります。もし遺言書を書くのを途中で断念してしまっても、金融機関の整理は行っておくとよいでしょう。

③遺言執行者の決定について

遺言の執行とは、自分の亡くなった後に「遺言の内容を実現する」手続きのことです。そして、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理やその他遺言の執行に必要なすべての行為を行う者を遺言執行者といいます。遺言執行者は、自分の残した意志を実現に導く非常に重要な役割を持っています。遺言執行者を指定しないことも可能ですが、指定されていると金融機関等の手続きの際に非常に負担が少なくなるため、遺言執行者は指定しておきましょう。

遺言執行者は1人だけでなく、複数指定することができます。万が一、遺言執行時に遺言執行者が亡くなられていた場合、残された家族が家庭裁判所へ新たな遺言執行者の選任の請求をする必要があります。相続手続きの負担を減らすために遺言書を残していたとしても、スムーズに手続きを行えなくなってしまいます。そのため遺言執行者は、複数人指定しておきましょう。

(2)まとめ

遺言書を書く前に、「相続人調査」、「財産調査」、「ご本人のご意向」、「遺言執行者の決定」を行っておきましょう。実際に遺言書を書かないとしても、「財産調査」のみ行い、不要な口座の解約や必要な資料を集めておくだけで、相続手続きの費用も負担も減るのでぜひ行っておきましょう。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい、相談をしてみたい方はこちらから当事務所までご連絡ください。