法律に優先順位ってあるの?憲法違反ってどういうこと?わかりやすく説明していきます

「〇〇が〇〇を憲法違反と主張している」などのニュースを時々見ます。先日もゲームの依存症対策として利用時間の目安を定めた条例について、裁判所は条例の目的は合理性があり、憲法に違反しないと判断したというニュースがありました(まだ確定はしていません)。条例?憲法違反?法の優先順位について説明していきます。

(1)法令の優先順位について

いきなり法令という今まで出ていない単語が目次になっているので、まずは法令から説明していきます。法令とは、一般的に法律(国会が制定する法)と命令(行政機関が制定する法)を合わせた言葉です。なお条例というのは命令の一部で行政機関が制定する法です。法令の優先順位には「三つの原則」があります。

①上位法令の優先
②特別法の優先
③後法の優先

①上位法令の優先

法令には優先順位があります。一般的に上位法で大きな理念(ざっくり)を定め、下位法で具体的な取り決めを決めます。日本の法令で最も上位法が憲法であり、上位法に違反する下位法は無効となります。冒頭に記載したゲームの条例は、憲法で定められた自己決定権やプライバシー権を侵害しているかどうかが争点となりました。裁判所は憲法で定められた自己決定権やプライバシー権を侵害していないとし、憲法に違反しないため合憲有効と判断したということです。なお法律に違反している条例を制定したとしても無効となります。

1)憲法

国の統治体制の基礎を定める法です。憲法によって、すべての国家権力を制限し、歯止めをかけていくために、憲法は他の法よりも優先され、国の法において最上位にあるということを憲法の「最高法規」性と呼びます。

2)条約

国同士の文書による合意のことです。多国間条約も二国間条約もあり、具体的な名称も、条約のほか、憲章、協定、協約、宣言、議定書等さまざまです。一般的に条約の国内法的効力は法律に優先するとされています。多国間の経済連携の協定である「TPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)」、気候変動に関する「パリ協定」などが条約に該当します。

3)法律

議会(国会)が所定の手続きに従って定めた制定法を言います。国民から選挙で選ばれた議員で構成される国会で制定される点で、後述の「命令」とは異なります。サラリーマンの定年が65歳まで延長された「高年齢者雇用安定法」、新型コロナウイルスの流行によって改正された「特措法」などが法律に該当します。

4)命令

国の行政機関が制定する法を総称する言葉になります。内閣(政府)が制定する命令である政令や各省大臣が制定する命令である「省令」などが該当します。

5)条例

条例は「地方公共団体の議会」が制定する法のことです。冒頭の条例は香川県会議員が制定した法になります。

②特別法の優先

上記した同順位内の法令でも「一般法」と「特別法」があります。ある事項について一般的に規定した法令を「一般法」といい、一般法に規定する事項のうち特定の場合について規定した法令を「特別法」といいます。同順位内に、「一般法」と異なる内容を定めた「特別法」があるときは、「特別法」が「一般法」に優先して適用されます。

「民法(一般法)」と「借地借家法(特別法)」で説明します。「民法(一般法)」では、契約自由の原則があります。つまり誰とどのような契約を結ぶかは個人の自由となります。しかし家を借りていたのに急に出て行けと言われても借主は困ってしまいます。立場が弱い借主を保護するために「借地借家法(特別法)」が定められました。そのため「民法(一般法)」より「借地借家法(特別法)」が優先されます。

③後法の優先

内容的に矛盾してしまう同順位内の法令の間では、後に制定された法は、先に制定された法に優先して適用されます。税法は毎年のように改正され、改正後の新しい税法をもとに税務を行うことが一番イメージしやすいかと思います。

(2)まとめ

日本の法令において、憲法が最上位にあり、憲法に違反することを憲法違反、憲法に合致していることを合憲と呼びます。また法令には優先順位があるので、この法令にはAと記載があったけど、他の法令にはBと記載があった場合などにどちらを優先するか判断する際に役立ててください。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい方はこちらから当事務所までご連絡ください。