転勤などで、期間を限定して建物を貸したいって可能?定期建物賃貸借契約についてわかりやすく説明していきます

転勤で2年間自宅を空ける、リノベーションした部屋を貸したい、5年後に建物の建て替えを予定しているなどの事情で長期ではなく短期で建物を貸したい場合は、どのような契約をすればいいでしょうか?普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の違いについてわかりやすく説明していきます。

(1)普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約について

建物を貸し借りする契約には、主に普通建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約の2種類の契約があります。普通建物賃貸借契約は全体の95%程度を占めているため、定期建物賃貸借契約については知らない方も多いと思います。

ではこの2つの契約にはどのような違いがあるのでしょうか?一番大きな違いは、契約の更新ができるかできないかという点です。契約の大部分を占める普通建物賃貸借契約は、多くが2年契約で更新が可能なものとなっています。契約によっては、借主貸主双方が何もしなければ自動更新することも可能です。貸主は正当な事由がない限り更新を拒むことはできず、借主が希望すれば長期間住み続けることが可能です。一方で定期建物賃貸借契約は、契約期間の満了すると、更新が認められていない契約です。双方が更新を希望した場合は、再度契約を結びなおす必要があります。例えば2年の転勤のはずがもう2年延長になった場合などで、貸主借主双方が更新を希望した場合は、再度契約を結ぶことができます。

(2)更新について以外の違いについて

①契約の成立について

普通建物賃貸借契約の場合は、法律上は口頭でも成立します。契約の成立には、基本的に契約書の作成をせずとも、任意の意思表示で足ります。しかし後からトラブルが発生する可能性があるため、通常は契約書を作成しています。

契約書とは別の書面の例。国土交通省のHPより引用

一方、定期建物賃貸借契約は、公正証書等の書面による契約が必要になります。また契約書とは別の書面でも説明することが求められます。更新ができないという特殊な形態のため、借主が普通建物賃貸借契約と勘違いしないために念入りに説明する必要があります。公正証書等の書面と聞くと、公証役場にいって費用をかけてとハードルがかなりあがるイメージがあると思います。しかしこの公正証書は例示に過ぎないため、通常の契約書など、公正証書以外の書面によって定期建物賃貸借契約をしても問題ありません。

②賃料の増減額について

普通建物賃貸借契約・定期建物賃貸借契約ともに、貸主借主が協議のうえ賃料を変更することができます。例えば、固定資産税の増減、近隣の同様の建物の賃料の増減などで賃料が不相当となった場合です。ここで大きく異なるのが、減額することを排除できるかできないかの点になります。基本的に建物の貸し借りは、借主が有利な法律となっています。貸主が急に賃料をあげると言い出すと、借主は借り続けることができなくなり住む場所がなくなってしまう可能性があるためです。そのため借主が不利となる賃料の減額を排除することはできません。

一方、定期建物賃貸借契約は、普通建物賃貸借契約より契約期間が短期となるため、賃料の減額を排除することができ、増額のみを認めることができます。だからといって簡単に賃料を増額できるかは別の話になります。先ほどの固定資産税の増加などの客観的数値で増額の妥当性が問われることになります。

(3)まとめ

転勤で2年間自宅を空ける、リノベーションした部屋を貸したい、5年後に建物の建て替えを予定しているなどの事情で短期間貸したい場合は、定期建物賃貸借契約が有効です。知り合いに貸す場合などは、不動産業者に仲介してもらわずに契約することも可能です。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい方はこちらから当事務所までご連絡ください。