分譲マンションの建て替えや取壊しに必要な条件は?わかりやすく説明していきます

先日官房副長官がテレビ番組で「全員が同意をしなければ再生ができない、解体ができないということでは硬直的すぎる」と分譲マンションの建て替えや取壊しに向けた話し合いを進みやすくするための議論を本格化させる旨の発言をしました。マンションの建て替えや取壊しに必要な条件をわかりやすく説明していきます。

(1)なぜ今分譲マンションの建て替えや取壊しの話が話題になっているのか?

国土交通省_建築着工統計調査から引用

国土交通省によると、2021年末時点で国内の分譲マンションのうち約115万6千戸が築40年以上になり、10年後はさらに倍以上に増える見込みです。40年前の1982年は、五百円硬貨が発行され中曽根内閣ができた年で、新しい耐震基準がつくられバブル期前夜という時代です。1970年代から旧住宅金融公庫で融資制度が利用できるようになったことから、郊外型の団地が急速に増えていきました。80年代はバブル景気が始まっており、投資用のマンションが多く建築されました。それらのマンションが老朽化してきており、地震の多い日本では危険性が増しているということです。

一方で、分譲マンションを建て替えたり、本格的な修繕工事を行うには、所有者を集めて総会を開き、多数決を取る必要があります。しかし、築年数が進んだ分譲マンションでは、所有者が死亡した後、誰も住んでいなかったり、相続などにより所有者がどこにいるかわからないケースや、先日に記事で書きましたがそもそも相続登記がされていないケースも多いです。現在の法律では、「所在不明者」などは、建て替えなどを決めるために総会を開いても、「反対者」とされるため、話し合いが進みません。これが問題となっているため、法律を改正しようという動きになっています。

(2)分譲マンションの建て替えや取壊しに必要な条件は?

分譲マンションの建物や敷地の利用や管理など、所有者同士の事項について定めたルールを「規約」といいます。この「規約」は、分譲マンションの憲法ともいわれ、そこに住みことになったら必ず目を通しておきたいものです。なぜこの「規約」はあるのでしょうか?分譲マンションは、複数の所有者の世帯が暮らす場所です。世代や考え方、ライフスタイルなどさまざまに異なる人たちが、一つの建物を区切って所有しながら、一部は共有しながら生活しています。こうしたすべての住人の要望を満たすことは非常にむずかしいため、一定のルールが必要になります。

しかし中にはルール違反を犯す人もいます。そこで、そのようなルール違反者に対して、どのような措置をとることができるのでしょうか?まず口頭でやめてほしいということは「行為の停止等請求(訴訟外)」に当たり、所有者であれば誰でも一人で行うことができます。それでもルール違反が続き裁判を起こすとなった場合は「行為の停止等請求(訴訟)」に当たり、所有者が集まり過半数の賛成が必要となります。共同生活上の障害が大きく、「行為の停止等請求(訴訟)」では十分な効果が期待できない場合には、裁判を起こしてルール違反をする人に対して住んでいるところを一定期間の使用禁止を請求することができます。必ず裁判を起こす必要があり、裁判を起こすには所有者の4分の3以上の賛成が必要になります。このようにルール違反をする人に対して厳しい措置を取るには、所有者のより多くの賛成が必要となっていきます。

最も多くの賛成が必要になるのが、所有者全員に大きな影響が出る「建替え」になります。所有者の5分の4以上の賛成が必要となります。

(3)まとめ

バブル前からバブル真っ最中にかけて建築された分譲マンションの老朽化が今問題となっており、取壊しを進めていきたいが、建て替えや取壊しの条件(規約)が難しくうまく進んでいないため、法律が改正される可能性があります。「規約」はマンションの憲法ともいわれるものなので、分譲マンションにお住みの方は一度は目を通しておいてください。

このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい方はこちらから当事務所までご連絡ください。