岸田総理が答弁した行政権とは?わかりやすく説明していきます

先日の国会で岸田首相は安倍元首相の国葬に関して次のように答弁しました。「こうした国葬儀は、立法権に属するのか、司法権に属するのか、行政権に属するのか判断した場合に、これは間違いなく『行政権』に属するものであると認識しています」。

岸田首相のいう「行政権」とはどういうものを指すのでしょうか?わかりやすく説明していきます。

(1)行政権とは何か

国の基本法である日本国憲法は、三権分立構造を採用しており、立法権を国会に、司法権を裁判所に、行政権を内閣に帰属させています。なぜかというと、国の権力が一つに集中すると権力をむやみやたらに使われる恐れがあるため、三つの権力が互いを抑制し、均衡を保つことによって権力の乱用を防ぎ、国民の権利と自由を保障するためです。国内外とわず歴史・現代を見ても権力の集中は良い結果をあまり生んでいません。

①立法権とは

「立法権」は、国会が法律をつくったり、変えたり、廃止したりする権利のことです。国会は、憲法に「国権の最高機関」と書かれています。とは言っても国会がすべての機関に優先するという意味ではありません。「最高」と書かれている理由は、国会が三権のうち唯一、国民からの直接選ばれたメンバー(選挙)で構成されるため、国民の意思を最もよく反映している機関だからです。そのため、国のすべての機関のうち最も重要な地位にあるという意味で位置づけられています。法律を決めたり、予算を決めたり、外国と結んだ条約を承認したりすることを行っています。

②司法権とは

「司法権」は、裁判所が法律に基づいて争いごとを解決する権利のことです。裁判所は、最高裁判所と下級裁判所で構成されています。下級裁判所には、高等裁判所と地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があります。ふつうに生活しているとあまり関係ないと思いがちですが、裁判員制度が始まっているので、私たちも裁判員に選ばれる可能性があります。

③行政権とは

前置きが長くなってしまいましたが、「行政権」は、国会で決められた法律や予算に基づいて、国の仕事を進めていく権利のことです。内閣のメンバーは内閣総理大臣と国務大臣から成り立っています。内閣のメンバーが集まる「閣議」で決められた方針に基づいて、国務大臣が各省や庁に指示を出して、国の政治を進めています。

(2)行政権をくわしく

立法の働き(法律を制定する)や司法の働き(争いごとを法律で解決)するとイメージがつきやすいと思います。しかし行政の働きのイメージはつきますか?行政の働きに関しては、学説上争いはありますが、「国の働きの中から立法の働きと司法の働きを除いた働き」が通説になっています。

行政の働きは国、都道府県、市区町村などの組織が行います。そのため行政の働きは、ごみの収集から官庁の許認可、果ては気象衛星の打上げまで含むため、行政の働きを定義づけることが非常に困難です。行政の働きは、私たちの生活に密着しているものからそうでないものまで非常に幅広いです。例えば区役所での住民票の発行、運転免許の取得・更新、交通料金の値上げの許可から飲食店の営業許可、病院開設の許可、原子力発電所の建設許可にまで至ります。なお行政の働きは、法律の根拠に基づき、法律に従って行わなければなりません。市長と仲が良いので、教習所に通わず、運転免許センターの一発試験も合格せずに運転免許証が交付されてしまうと、粗い運転で他の人が迷惑してしまう可能性が高いです。そのため法律で決まっている運転免許証の交付の要件をちゃんとクリアしないと交付はされないということです。

(3)まとめ

行政権とは、三権分立構造の1つで、内閣が国会で決められた法律や予算に基づいて、国の仕事を進めていく権利のことです。普段生活していても行政についてはあまり意識しませんが、行政は私たちにとって非常に身近なものです。一方、首相が行政権と国会で答弁すると非常に遠いものに感じるものなので、少し不思議な感じがします。行政とは国、都道府県、市区町村などが行うものです。行政は、私たちの生活を守り豊かにするために活動しています。しかし、行政だけで進めてしまうと、私たちの望まない方向に行くこともあります。私たちが行政を見守り、何かあった場合は連携していく必要があります。