75歳以上の方の医療費負担が増える?後期高齢者医療制度の改正について

今日から中村屋のレトルト食品、明日からはファミチキ、来月からは、はごろもフーズのシーチキンも値上げとインスタント食品、加工品、乳製品、乾物、調味料、菓子、飲料とあらゆるものが値上げラッシュとなっています。帝国データバンクによると、22年8月は月間ベースで今年最多の2431品目が値上げされる見通しで、これまで最多だった7月(1607品目)を大きく上回る見込みです。秋には夏を超える約8000品目の値上げが予定されており、家計への影響が強まることは確実です。そんな中、令和4年10月から後期高齢者の医療機関等での自己負担額があがる方がいます。対象となる人の条件などを説明していきます。

(1)公的医療保険制度について

日本の公的医療保険制度には、「被用者保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3つの種類があります。公的医療保険制度の加入は、年齢や就労状況等によって異なりますが、全国民がいずれかの医療保険制度に加入しています。

①被用者保険

被用者保険とは、サラリーマンなどの被用者やその扶養家族を対象にした健康保険のことを指します。被用者保険の種類は、主に以下の4つに分類されます。

・組合管掌健康保険
  大企業の被用者を対象とした健康保険
・全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)
  中小企業の被用者を対象とした健康保険
・船員保険
  船員が対象
・共済組合
  公務員が対象

保険料は被用者の給与水準によって定められ、被用者と企業が折半して支払います。また、傷病手当金や出産手当金など様々な給付があり、病気やケガ、出産等で休業するときも、安心して療養や出産に専念できるところが大きな特徴です。

②国民健康保険

国民健康保険は、市区町村が運営する医療保険制度になります。主に自営業や農業、無職の人など企業に所属していない人が加入します。保険料は、世帯ごとに収入や資産額、世帯人数に応じて算出され、世帯主が負担します。保険料は、その市町村の療養の給付にかかる費用によって保険料を算定しますので住むところによって金額が異なります。また傷病手当や出産手当金の給付はほとんどの市町村で行っていません。そのため、被用者保険と比べると保障が手薄な場合もあり、もしもに備えて民間の医療保険などで補うことが大切です。

③後期高齢者医療制度

後期高齢者医療制度とは、75歳以上もしくは65歳以上で障害を持つ高齢者が加入する公的医療保険制度です。対象となる高齢者は個人単位で保険料を支払い、窓口負担は1割となります(現役並みの収入世帯は3割負担)。今回はこの制度が変更となります。

(2)見直しの背景

令和4年度以降、団塊の世代が75歳以上となり始め、医療費の増大が見込まれています。後期高齢者の医療費のうち、窓口負担を除いて約4割は現役世代の負担となっており、少子化の影響もあり今後も拡大していく見込みです。今回の窓口負担割合の見直しは、現役世代の負担を抑え、国民皆保険を守っていくという未来につないでいくためのものです。

(3)見直しの内容について

厚生労働省のHPより引用

令和4年10月1日から、75歳以上の方等で一定以上の所得がある方は、医療費の窓口負担割合が1割から2割に変更となります。負担が変更となる方には負担を抑える配慮措置があります。具体的には令和7年9月30日までの間は、外来医療の窓口負担割合の引き上げに伴う1ヶ月の負担増加額が3,000円までに抑えられます。例えば、1割負担で1ヶ月に5,000円を負担していた人が2割負担となると10,000円の負担となり、5,000円の負担増となりますが、配慮措置により3,000円の増加(計8,000円の負担)に抑えられます。

(4)対象者は?

後期高齢者の自己負担割合は世帯単位で決まります。令和4年10月以降の自己負担割合は、以下の流れで判定されます。

厚生労働省のHPより引用

①現役並み所得者とは?

同じ世帯の被保険者の中に、住民税課税所得が145万円以上の所得者がいる方が対象となります。住民税課税所得とは、収入金額から公的年金等控除、給与所得控除、必要経費等を差し引いて求めた総所得金額等から、さらに各種所得控除(社会保険料控除、医療費控除等)を差し引いた金額です。毎年6月に住んでいる市区町村から送付される住民税の納税通知書等で確認することができます。ただし、住民税課税所得が145万円以上でも、一定の条件を満たしていれば1割負担となりますのでお住いの市区町村窓口に確認してください。

②変更の対象者は?

世帯内の後期高齢者に課税所得が28万円以上145万円未満の人がいる場合には、後期高齢者の人数と「年金収入(遺族年金・障害年金は除く)+その他の合計所得金額」によって、自己負担割合が決まります。自己負担割合が2割となるのは以下2つの場合です。

①世帯内に後期高齢者が2人以上いる、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が320万円以上
②世帯内の後期高齢者が1人で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上

上記①②のいずれにも該当しない場合は、1割負担のままです。2割負担が導入されるのは2022年10月からのため、2021年の課税所得や年金収入をもとに2割負担と判定された世帯は、2022年10月~2023年7月までの間、自己負担割合が2割となります。2023年8月以降は、前年の所得をもとに8月~翌年7月までの自己負担割合が決まります。

(5)影響範囲は?

令和4年4月から年金の繰下げが75歳までできるようになり、年金が最大84%増額されるようになりました。これまでも、年金の繰下げにより所得が増えることで、毎年納める税金・保険料が増加し、結果的に手取りが減少してしまう可能性がありましたが、今後は後期高齢者医療保険の自己負担割合増加も併せて考慮に入れる必要が出てきます。

(6)まとめ

老齢基礎年金支給額(満額)は、平成11年の80万4,200円をピークに令和4年度は77万7,800円と徐々に減ってきています。65歳までの雇用確保が義務付けられ、働く期間は伸びていますが後期高齢者の就業率は低く、収入の中心は公的年金であることが明白です。ライフプランを作成するときは、老齢基礎年金支給額などは減額していく前提で作成していく必要があります。