委任状はどのようなときに必要?フォーマットはあるの?詳しく説明していきます。

役所でご家族のために代理人として手続きをすることはあるかと思います。わざわざ委任状を作成・持参していったのに、ご家族であることが確認できたので委任状は不要だったというケースもあります。しかし士業の方などに何かを依頼して、代理人として手続きをお願いした場合は必要な書類となります。では委任状について説明していきます。

(1)委任状とは

委任状は、本来なら自身で行うべき一定事項の手続きを第三者に委任したことを記載した文書のことです。本来自身がやるべきことでも、都合がつかずできないときに委任状を作成することで、第三者に依頼することができます。便利な面もありますが、トラブルのもとになることもあるので注意が必要です。

委任状には特にフォーマットはありません。各役所ごとに入力例などはありますが、自作の委任状でも問題はありません。不安な方は各役所の様式を使いましょう。自作でも問題ないため記載する用紙についても決まりはありません。コピー用紙や便せん、メモ用紙でも構いません。また委任状には法律で決められた有効期間はありません。しかし、日付が古すぎるとトラブルのもとになるため、多くの機関で「作成から3ヶ月以内」のものを提出するよう求められます。

(2)記名と署名と押印について

記名・・・PCなどで印字されたもの
署名・・・本人が直筆しているもの

委任状を作成し、他者に手続きを依頼することは契約に当たります。「記名」は、あくまでも印字されたものなので、記名だけの契約は有効とは認められませんが、記名押印で有効な契約となります。一方で、「署名」はというと、本人が直筆しているので押印がなくても有効と判断されます。署名に押印も求められるのは、本物であることを確実にするためです。そのため、記名押印=署名=署名押印のいずれも有効なものとして判断されます。特に委任状において一番大切なことは、「本人が代理人に手続きを委任する意思があること」です。その意思を委任状という紙一枚で判断するため、できる限り署名押印が望ましいということです。

押印に関しては、シャチハタはNGです。シャチハタが認められない理由は、各種申請書類は一定の保存年月があり、シャチハタのインクは数年経過すると消えてしまう恐れがあるためです。朱肉を使用する普通の認印で押印した場合、半永久的に印影が残るので、各種申請には認印を使います。

本当に本人の意思によるのか?というトラブルを回避するため、金融機関等で申請する場合は、署名と認印ではなく実印を求められます。そして、実印を押した場合には、印鑑証明が求められます。なお、本人の意思に基づかず委任状を作成及び使用した場合は、有印私文書偽造及び行使の罪に問われる可能性があります。

なお令和2年からデジタル化を進めるために押印を見直す動きが進んでおり、一部の機関では署名のみを求められるケースが増えています。

(3)委任状に記載すべき内容について

横浜市のHPから引用

委任年月日・・・委任状に記載する日付は「委任した日」になります。
委任者の氏名・住所・・・本人を確定するために生年月日や電話番号の記載が必要なこともあります。
受任者(代理人)の氏名・住所・・・委任者同様、受任者も生年月日や電話番号の記載が必要なこともあります。
委任内容・・・できるだけ詳しく具体的に記載します。
押印・・・必要に応じて認印か実印を押印します。

委任状を作成するにあたって、一番注意してほしい点は「委任内容を明確に記載すること」です。例えば委任内容で「○○に関する一切の権限」というのをよく見ます。それ自体がダメというわけでありません。しかし作成した委任状を使って、委任した人の想定している範囲以外のことまで、委任された人はやってしまう可能性もあります。そのため、目的とどの範囲まで委任しているかを明確に記載することが大切です。

他に注意が必要なことは、「白紙委任をしない」「以下余白を忘れない」「捨印は慎重に」「コピーをとっておく」があげられます。「白紙委任」とは、委任状に委任したい人や委任内容など何も書かず、委任する人の署名押印だけすることをいいます。なんでも自由に書くことが可能になってしまうので基本的にはしないでおきましょう。「以下余白」は、委任内容の最後に書くことにより、余白に追加で書き込むことを防ぐことができます。「捨印」とは、軽微な修正が必要な場合は有効なものですが、悪用されて委任内容を変更されてしまう可能性もあります。「コピー」は念のため取っておきましょう。

(4)まとめ

委任状は、時間が取れない際に第三者に手続きをお願いできる便利なものです。しかし悪用される危険性もあります。不動産売買で委任する場合もありますが、委任内容によっては影響する金額が非常に大きくなるので注意が必要です。委任内容を具体的に記載し、委任状に項目を追記されないようにすることが重要です。