建設業許可に関する記事一覧
1_建設業許可とはいったいどのようなものか
2-1_建設業許可の条件がいったいどのようなものか
2-2_「経営業務の管理責任者がいること」について
2_3「専任の技術者がいること」について
3_申請に係る書類と時間、費用について
4_準備する資料等について
5_申請書作成で不明点が発生した場合や申請書提出の流れについて
7_無事許可がおりた後に必要な手続きについて
前回の記事で、申請書作成で不明点が発生した場合や申請書提出の流れについて説明しました。この記事では建設業許可を取得したという前提で話を進めていきます。念願の建設業許可を取得して、今までよりも規模の大きな工事を受注してどんどん会社を大きくしていこうと考える方が多いと思います。許可の取得はメリットだけではなく、一定の義務を課されることにもなります。無事許可がおりた後に必要な手続きについてわかりやすく説明していきます。
(1)課される義務とは?
ここまでの記事同様に、この記事は新規で建設業許可の取得を目指している方向けのため、法人で県知事の許可を一般建設業で取得した場合に絞って説明します。
①建設業許可証明書
②許可標識の掲示
③帳簿の備え付け・営業に関する図書
④主任技術者の配置
⑤一括下請負の禁止
⑥変更届
⑦決算変更届の提出
⑧更新申請
①建設業許可証明書について
建設業の許可がおりたら、行政からA4の建設業許可通知書が送付されます。これは「建設業許可証明書」とは異なります。この通知書は許可がおりたことを申請者に知らせるために交付されるものになります。そのため、許可内容に変更が発生したとしても、これを反映した新たな通知書は再発行されません。つまり新規で取得した際にのみ、その申請時の情報で交付されるものになります。なおこの通知書は再交付されないため、なくされないように気をつけてください。
では「建設業許可証明書」とはどんなものなのでしょうか?「建設業許可証明書」とは、建設業許可を受けた事業者が許可を受けた先から交付を受けることのできる書類です。先方から建設業許可を証明する書類の提示を求められた際に必要となる書類です。ただ、慣例として通知書ですむ場合も多くあるようです。「建設業許可証明書」は、許可内容に変更が発生して届出を出した後に請求すれば情報は更新されています。つまり、請求した時点の情報で交付されるものになります。「建設業許可証明書」は、実際に許可を取得した行政から発行されます。神奈川県で許可を取得した場合は、許可申請の窓口と同様に横浜駅のかながわ県民センターにて請求することができます。
②許可標識の掲示について
建設業の許可がおりても標識が行政から送られてくるものではありません。送られてくるものは建設業許可通知書のみです。許可標識は自分で作成または業者に発注する必要があります。また掲示する場所についても、法律で細かく定められています。建設業許可を取得したら本店・支店・営業所だけでなく、工事現場の見やすい場所に掲示しなければいけません。工事現場が複数ある場合は、その現場ひとつひとつに建設業許可票が必要になるので注意が必要です。なお店舗と工事現場に掲示する建設業許可票では、記載内容と大きさに違いがあります。もし掲示がないと10万円以下の罰金の罰則があります。
工事を発注しようと検討している方、工事現場近くの住民の方に一目で建設業許可業者とわかるようにしておくことが重要です。
③帳簿の備え付け・営業に関する図書について
建設業許可を取得した場合、請負契約の内容を管理した「帳簿」を営業所ごとに基本5年間保存しなければなりません。帳簿へ記載しなければならない項目は下記となります。帳簿とは別に「営業に関する図書」は10年間保存しなければなりません。営業に関する図書とは、「完成図」、「発注者との打合せ記録」などが該当します。
建設業者が適正に建設工事を行うことや安定した経営をしていくために、受注した建設工事の内容をきちんと記録・保存して、工事の進捗状況の管理をすることが重要だからです。自社の帳簿が法律上正しく作成できているか確認してください。
④主任技術者の配置について
建設業許可を取得した場合、必ず建設工事現場にに主任技術者を配置しないといけません。主任技術者の条件は、一般建設業許可の専任技術者と同じになります。なお建設業許可の不要な工事つまり500万円未満の工事であっても主任技術者は配置しなければいけません。
工事の質を担保するためにも一定の技術を持った人がいないといけないためです。
⑤一括下請負の禁止について
一括下請負とは、工事を請け負った業者が、実質的には工事に関与せず、下請けに丸投げして工事をさせることです。この請け負った業者というのは「元請」だけに限りません。「下請」として請け負った業者が「孫請」に丸投げしても一括下請負の禁止に当たります。発注者の信頼を裏切ることになり、責任が曖昧になり手抜き工事や労働条件の悪化につながり、またブローカー的な建設業者を生んでしまうからです。
ここまでの①~⑤は許可取得後から発生するものになります。ここからは発生するたびや定期的に発生する事項になります。
⑥変更届について
建設業許可を取得した場合、基本的に申請した書類に記載した内容に変更があったときは変更届を提出しなければなりません。県知事の許可を取得していれば、申請した県に提出する必要があります。変更内容によって提出の期限が異なりますので注意が必要です。主な事由を下図にまとめます。
⑦決算変更届の提出について
毎事業年度終了後4ヶ月以内に、決算変更届を提出しなければなりません。⑥変更届は変更があった際に提出が必要でしたが、決算変更届は毎事業年度ごとに必ず提出が必要になります。申請に提出した書類のうち、決算変更届が必要なものは下図になります。
毎年営業実態がある、経営状況が良好であることなどを証明するために必要になります。
⑧更新申請について
建設業許可は、取得したらずっと使えるものではありません。5年という有効期限があります。必ず有効期限内に許可の更新手続きをする必要があります。そして、申請期限は「許可の満了する日の30日前まで」となります。万が一有効期限が切れてしまった場合は、建設業許可は失効となり、再取得するためには、新規で許可申請をする必要があります。更新時に必要な書類は、基本的に申請時に提出した書類から決算変更届を引いたものと考えてください。
(2)まとめ
ご覧になった通り許可の取得はメリットだけではなく、一定の義務を課されることにもなります。基本的に申請時に提出した情報に変更が生じる場合は行政に報告する必要があると考えておきましょう。罰則が課されているものが多いので失念しないようにしましょう。
このブログは「わかりやすく」をモットーとしています。厳密にいうと例外もありますが、例外を記載していくと分かりづらくなるため書いていません。詳細を確認したい方やご相談はこちらから当事務所までご連絡ください。