みなさんがご存じのように今の日本は「超高齢化社会」です。高齢化はどんどん進んでいます。3年後の2025年には、これまで社会、経済、社会保障から文化まで強い影響を与えてきた「団塊の世代」の約800万人が後期高齢者となり、国民の「5人に1人」が75歳以上、65歳以上は人口の3割を超える「超超高齢化社会」に突入することになります。
国の介護の方針は、「できる限り、住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指す」 として在宅介護を薦めています。しかし、「介護で子どもたちに迷惑をかけたくない」と考えている方も多くいます。それでは介護が必要になった場合、どのような選択肢があるのかをわかりやすく説明していきます。
(1)公的介護保険とは?
介護が必要になった高齢者を社会全体で支える仕組みが公的介護保険制度です。介護保険は介護が必要な方に、その費用を給付してくれる保険です。保険ですから、皆で保険料を負担して、必要な方に給付する仕組みになっています。どんな保険でもそうですが、給付を受けるには色々手続きをしなければなりませんし、受けられるかどうかの審査もあります。制度の運営主体(保険者)は、全国の市町村と東京23区(以下市区町村)で、保険料と税金で運営されています。サービスを受けるには原則1割の自己負担が必要です。ただし、前年度の所得に応じて、自己負担率が2割あるいは3割になります。
保険料の支払いに関しては、40歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。40歳になった月から手取りの給料が減って、給与明細を見たら介護保険料が引かれているという経験をされた方もいると思います。
介護保険の加入者には第1号被保険者(65歳以上の方)と第2号被保険者(40歳から64歳までの方)の分類があります。保険料の支払い義務はどちらにもありますが、サービスの対象者 (受給者) は、原則として第1号被保険者だけです。公的介護保険から受けられる介護サービスの種類は、大きく分けると次のように区分されます。
(2)公的介護保険のサービスを受けるには?
介護サービスを受けるには、「介護を要する状態にある」との要介護認定を受ける必要があります。この要介護認定は、介護の度合いに応じて「要支援1~要支援2」「要介護1~要介護5」の7段階に分けられます。
(3)介護が必要になった場合、どのような選択肢があるのか?
介護が必要になった場合、選択肢は大きくわけて3つになります。
①居宅サービス
居宅サービスとは、自宅で生活する人を対象とした介護保険の介護サービス全般のことを言います。利用者は要介護2以下が7割を占めているというデータもあり、その割合は年々増加傾向となっています。居宅サービスの費用は、要支援および要介護度や、利用するサービス、居住している市町村などによって変動があります。居宅サービスの種類は、「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」「その他のサービス」の4種類になります。
②病院
長期にわたり療養をする必要とする方向けの病床が減少しているため長期の入院は困難な状況になっています。
③施設利用
公的施設と民間施設の大きく2種類にわけることができます。詳細は次の項目で説明します。
(4)介護を受けられる施設とは?
①【公的施設】特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(通称:特養)は公的な介護保険施設で、入居基準は要介護度3以上となっています。食事・入浴・排せつ介助などの身体介護、清掃・洗濯など日常的な生活支援、リハビリ、レクリエーションなどの介護サービスを受けることができます。重度の認知症の方の受け入れも行っています。看護師は、日中はいますが夜間配置の義務はないため、医療ケアを常時(夜間も)必要とする方の対応は難しく、入居不可となるケースもあります。入居の順番は申し込み順ではなく、介護度以外に家族状況なども考慮して必要度が点数化され、緊急度の高い方が優先されます。横浜市旭区には今宿ホームなど19ヶ所、横浜市全体で166ヶ所あります。22年9月11日現在で今宿ホームは109名の待機者がおり、場合によっては入居まで数ヶ月~数年かかると言われています。
②【公的施設】介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(通称:老健)は病院と自宅の中間的な位置づけで、退院後すぐの在宅生活が難しい要介護1以上の方を対象に、在宅復帰を目指す介護保険施設です。原則として入居期間は3~6ヶ月で、長期の入所が難しくなっています。食事・入浴・排せつなどの身体介護、医師・看護師による医療的管理、理学療法士などによるリハビリテーションなどが提供されます。横浜市旭区にはけいあいの郷今宿など11ヶ所、横浜市全体で87ヶ所あります。
③【民間施設】介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、介護が必要になったときにそのホームのスタッフがサービスを提供する施設です。要介護1~5の認定を受けた要介護者のみが入居できる「介護専用型」と、自立・要支援と要介護の方を対象にした「混合型」があります。「混合型」の中には、身の回りのことが自分でできる自立状態であることを入居条件とした「入居時自立」というホームもあります。
④【民間施設】グループホーム
要支援2以上で原則65歳以上の認知症高齢者で、施設がある自治体に住民票を持つ方が入居できる施設です。5~9人を1ユニットとする少人数で、専門スタッフから介護サービス、機能訓練等を受けながら、料理や掃除などの家事を分担し共同生活を送ります。家庭的な環境で自立支援と精神的安定を図り、症状の進行を遅らせることを目指しています。ただし、重介護や医療ケアが必要になった場合は退去しなければならないケースがあります。なお、認知症の方の受け入れは、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)でも行っています。
⑤【民間施設】サービス付き高齢者住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、60歳以上の方が入居でき、有資格者の相談員が常駐し、安否確認と生活相談サービスが受けられる住まいです。原則として部屋の広さは25㎡以上で、廊下幅などの規定があり、バリアフリー構造になっています。賃貸借契約で、初期費用は比較的安価な数十万円で借りられるところが多いですが、中には数千万円のところもあり、月額費用も10~30万円と、立地条件や建物、提供サービスによって差があります。独居や夫婦2人暮らしが不安な自立~軽介護度の方に適しており、介護が必要な場合は在宅サービスを利用します。
(5)まとめ
介護が必要になった場合、居宅サービス・病院・施設利用から選択することになります。すべてのサービスで、内容・入居(入院)のしやすさ、費用、退去条件などが異なっています。介護が必要になった場合にどのようなサービスを受けたいか検討しておき、ライフプラン作成時にそのサービスを受けるための予算を確保しておくことが重要です。
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